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【VOL.179】 「パッシブソーラー」という考え方

(2011/06/22 湯浅 剛 )

東日本大震災を経験し、クリーンで明るい未来の象徴のように見えていた「電気エネルギー」に、原発という大きな問題が潜んでいることが判明した今、国民全員がエネルギーのあり方に目を向ける時代がきたように感じます。全く電気に頼らずに生活するためには、まだ時間がかかりそうですが、太陽光発電、風力、水力、地中熱利用など、さまざまなエネルギー取得の方法や、省エネ技術が、今後ますます推進されていくことでしょう。

 太陽光発電や太陽熱温水器のように、特別な装置で太陽熱を濃縮したり、電力に変換したりするシステムを「アクティブソーラー」と呼びますが、建築的な方法や工夫によって、太陽エネルギーや風などの自然エネルギーを、そのまま建築に取り込んで利用することを「パッシブソーラー」と呼びます。太陽光発電や風力発電などの推進も必要ですが、同時にこの「パッシブソーラー」の考え方が、もっと見直されても良い時期になったのではないかと考えています。

 
住宅の設計をすすめる際に、気持ちのよい風が通るように四方に窓を配置して、通風を確保することや、東や南面に窓を設けて(軒や庇、ガラスで調整しながら)ダイレクトゲインで太陽エネルギーを取得することは常に考えています。ただ、夏場は日射対策と通風、断熱性能の確保が重要ですが、冬場は一定の断熱性能確保が前提としても、日当りの良い午後以外は、何らかの暖房が、必要となります。 

最近は、基礎断熱を施して床下を室内空間と考える「床下暖房」を採用することが増えてきました。これは局所暖房でなく建物全体を、足下から柔らかく暖めることで、室内の温度差をなくし、体に優しい室内環境をつくることにつながります。またこれにパッシブソーラーシステムを組み込んだり、薪ストーブやペレットストーブなどを採用して、電気やガスに変わるエネルギーを暖房に採用するケースも増えてきています。

 

屋根から太陽熱で暖められた暖気を床下に送り込んで部屋を暖めたり、お湯をつくったりするパッシブソーラーのシステムでは、すでに長年の実績がある「OMソーラー」や、オープン化されて誰でも利用できる「そよかぜ」などが一般的です。床下に暖気を送るファンを動かすのは電気エネルギーですが、暖房エネルギーと比較すると、かなり小さなエネルギー消費で済むところがポイントです。

太陽の出ていない曇りや雨の場合は、高い温度の暖気を取り込めません。補助暖房で暖房を補うことも多いようですが、床下のベタ基礎(コンクリート)に蓄熱させることで、数日はその効果を期待することが可能です。

「日ノ出町のいえ」では建主の希望もあって、OMソーラーを採用しました。


軒下から取込んだ空気が、屋根の鋼板下(一部強化ガラス下)を通って暖められ、室内に取り込まれます


屋根で暖まった空気は、このOMのハンドリングボックスで、床下に送り込まれます。
(夏はそのまま熱とともに外に排気)


暖められた空気は立ち下がりダクトを経由した床下へ。
FRPグレーチング下は、補助暖房として利用するFFファンヒーター。


窓下に配置された吹出口(特注の木製ガラリ)


最近改良されたコントローラー。各部の温度が確認できます。
屋根面の空気温度が高いのがわかります。


ここ3日間の各部の温度変化です。屋根面が赤、外気温が青、室内温度が緑。
夜中から朝方には外気温(青)が5度前後になっているのに、室内温度(緑)は、ずっと20度前後と安定しています。


気持ちのよい自然素材を用いた2階の居間。
1階床下から吹き出す暖気は、階段を経由して2階にあがり、家全体がほぼ同じ暖かさになります。


「パッシブソーラー」の考え方は、家づくりの標準的な考えとなっていくのか。。
今後の展開が楽しみです。

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