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【VOL.194】住宅と消費税

(2012/12/01 鈴木 友則 )
 デザインスタジオ バオバブの鈴木です。

今年もあっという間に、師走へ突入した感じがしますが、残りあと1ヶ月となりました。

ついこの間まで半袖だったのが嘘のように、夏の暑さが恋しくなる、寒さが身にしみる今日この頃です。

早いもので東日本大震災が発生して2度目の冬を迎えます。報道の量が格段に減ってきたこともあり、リアルタイムで知る機会が少なくなってきました。復興のスピードはなかなかあがらず、思うようには進んでいないという声も多く聞き漏れてきます。もう少し時間がかかりそうです。

そんな復興もままならぬ状況の中、先月衆議院が解散され、今月16日に投開票が行われます。

新聞の紙面では連日、新党の動きが報じられ、政党が増えたり、減ったりと。

顔ぶれをみれば、元自民党という人ばかりで、ただ名前ばかりが新しくなるだけという印象です。

また、この間の選挙ではマニフェストと騒いでいたものが、いつの間にか公約という名に戻り、選挙目当てのリップサービスも増え、党首討論では他党の批判を繰り広げるばかりで、同じことの繰り返しに少し嫌気がさしている状態です。

それもこれも実際に政治を動かしている世代が近くなってきていることもあり、色々な面で見えてくる部分があるからかもしれません。

それでも16日には新たな政権が生まれるわけで、また短命に終わるのか、長期政権を担えるような政権運営が出来る政党が勝つのか、投票箱を開いてみないとわかりませんが、現在よりもまともになることを望みます。

 

前置きはこのくらいにして、少子高齢化が加速度的に進む中、社会保障、景気対策、雇用問題、デフレ脱却などの課題に加え、震災以降、エネルギー問題、原発問題が大きくクローズアップされ、そのうえ政治が迷走し、社会的混乱を招き、今後どういう方向で日本丸が進んで行くか先の見えない状況が続く中、先の通常国会において、3党合意のもと「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」が成立。現行5%の消費税率を2014年4月に8%、翌2015年10月に10%に引上げることが決定。その中で「住宅取得については、取引価格が高額であること等から、消費税率の引上げ前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいことを踏まえ、一時の税負担の増加による影響を平準化し、及び緩和する観点から、住宅取得に係る必要な措置について財源を含めて総合的に検討する」ことと定められました。このタイムスケジュールで事が進むとすれば、まず我々の仕事に関することで近々に影響が出てくるのが消費税の問題です。

 

わが国の住宅産業は、幅広い雇用を生み、日本経済を支える内需の柱の一つでもあることから、消費税アップに伴う駆け込み需要により、その反動の結果市場規模の縮小が懸念されています。

それもそのはず住宅産業界は一度苦い経験をしています。それは前回消費税がアップした時の駆け込み需要でバブル以降落ち込み傾向にあったものが一時的盛り上がりを見せたものの、その反動は大きく、かえって新築着工数を大幅に減少する結果となり、その時の二の舞にならないようにしなければという思いがあります。

そもそも住宅に消費税をかける必要性があるのか、という議論も十分にされないまま、ここまできているわけで、住宅には不動産取得税、登録免許税、固定資産税がかかり、さらに消費税がかかる多重課税となっていて、これは税法上好ましい状態ではないといえるし、国民にとって住宅を取得するということは、一生に一度あるかないかの大きな買い物であることから、税金のあり方というものの検討を要します。

これからの時代、良質なストックとなる住宅の必要性を訴え長期優良住宅を国は推進するのであれば、住宅には消費税ではない税のあり方があってもよいと思います。

個人的には住宅に消費税をかける必要はないと考えています。

 

世界に目を向ければ、各国それぞれの考え方や立場が違うものの、先進国で住宅に消費税を標準税率のまま課税している国は少数派で、非課税若しくはゼロ税率、または軽減して負担を減らしています。例えば米国やドイツは非課税、英国はゼロ税率しています。フランスやイタリアではそれぞれ7%、4%(贅沢な住宅や別荘は10%)。それぞれの国の消費税が20%前後あることを思えば負担が大幅に軽減されていることがわかります。


「住宅・すまいWeb  住宅政策 各国の住宅取得への付加価値税より引用」

選挙後の政権がどうなるかにもよりますが、現状では時の政権が消費税の引き上げの最終判断するのは来年の10月ごろの予定。そのときに判断するには4−6月期のGDPの伸びが問題となります。しかし今の状況では実際にプラス成長になるのは厳しいという見方もあり、必ずしも消費税が上がるとは限らないのですが、もしかしたらご都合主義的に判断し、もしくは一時的に景気対策をほどこして、数値的に合わせてくるのかわかりません。ともかく何かしらの理由付けを行い、消費税を上げることも考えられるので注視して行く必要があります。

 

ただあまりのんきに構えていることもできないのが、新築の住宅を建てる場合、設計から工事が竣工し、入居に至るまでは時間がかかるということです。

現段階では、前回の消費税アップの前例にならって消費税が上がる半年前までの契約分に関しては現状の5%、それ以降は8%ということになります。つまり来年の9月30日までの契約ということになります。

これは工事契約の期日ということになりますので、設計契約となると来年の3月くらいには結んでおいたほうがよいかもしれません。それ以降になってくるとスケジュールが厳しくなってくるのと、構造審査の必要な建物になってしまったりすると、間に合わないケースが出てくるので注意が必要です。(これはあくまで消費税アップ分を支払うのはちょっとと思っている方に対してであって、政府のいうようにちゃんと社会保障にその税金が使われるのであれば増税やむなしと考える方にとってはこのスケジュールはあまり関係ありません)

例えば3,000万円の工事費に対して設計料を10%の300万円とすると、現在支払う消費税は165万円が、8%にアップすると264万円、10%になると330万円となります。

これらの増額分をどう考えるかでしょうが、おそらく還付や住宅ローン減税などいろいろな施策がなされることとは思いますが、まだ具体的になっていないのが現状ですし、スケジュールも今後の政権によっては変わることも十分あり得ます。

 

ここまでは新築の話ですが、一方、中古住宅については売主が個人の場合は非課税となり、消費税はかかりません。ただし売主が事業主の場合は、消費税がかかりますし、仲介業者が入った場合、個人の売買であっても、仲介手数料に消費税がかかります。当然、中古物件をリフォームしたりすれば、その工事費には消費税がかかるということになります。

 

総世帯数を住宅戸数が大きく上回っている現在、実際住宅は余っています。

良質な中古住宅で、立地条件を含め、ニーズにあった住宅となると数的には少ないかもしれませんが、中古市場がもう少し活発に動き、活気づけば、ライフステージに合わせた住み替えや、住まい方、暮らし方、働き方など変わってくるとは思うのですが、それにはもう少し住宅に関する価値観、人生観など含めた熟成期間が必要ですね。

もしかしたら、この消費税の問題が一つの転換期になるのかもしれませんが。。。

ハードの面ばかり考えるのではなく、ソフトの面がいろいろと絡み合ってくるのが住宅ですし、幅広い産業分野が直接間接問わず関係しているので、住宅は個人財産でありながら、社会資本としての一面も担っています。

もう少し包括的に住まうことを考えていくことが、長期に渡って住み継がれていくことにもつながって行くと思っているのですが、なかなか現在の日本の社会システムの中では実現していくまで時間がかかるのが現状かなと思います。

 

今回の消費税アップのタイミングによって、背中を押してくれたという方もいらっしゃるだろうし、もし今迷っているというのであれば、慌てて住宅を建てることがよいのか、それともじっくり時間をかけて住宅を建てることがよいのか、中古住宅を探して、リフォームするのがよいのか少し考えてみてはいかがでしょうか。

需要と供給のバランスから考えて、駆け込み需要によって、一時的に建設コストが上がる可能性はありますし、消費税がアップしてしばらく経てば、アップ分のコストが下がる可能性もあります。

どのタイミングがよいかというのは、なかなか言い切れませんが、人生のライフステージの中で、やはり住まいを考えるというタイミングは必ずやってきます。あとはどこまで時間をかけることが出来るのか、住まいに対してどういう価値観を持って向き合っていくのがいいのか大切になってくると思います。

 

ただ今回の機会を前向きにとらえ、住まいを考えるいいキッカケにしてみるというのもひとつの手です。

家族でお正月に住まいについてゆっくり話し合うというのもいいかもしれませんね。

コメント

 まさしく我々設計者が、市民に説いていかないといけない課題ですね。
 来年がその実施活動の年であると考え、行動していきましょう。
2012/12/03 08:57 | えいちゃん
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